神々の戦争記

作者/海底2m

第一章  第二話 「記憶」-22


どれだけ眠っていたのかはわからない。
意識を完全に取り戻した時、辺りは荒れ果てていた。
地面にはかき消されたバリアの残骸が無残に転がっている。
水たまりや小さく燃える火、雪の塊、小さく静電気で弾ける石。そのすべてが物語っていた。
謎の鉱石の能力を――


「どうやら、触れていなくても取り込んでしまうようです」
ファレンが言った。勇は小さくうなずく。
まだ頭がくらくらするが、心配させてはまずいので平気を装った。

『全員無事か。隣の隊員の体調を確認、異常があった場合は報告しろ』
川島を含める三人は小さくうなずいた。
『指示するまで塹壕から出るな』
そういわれて勇がヒョコっと頭を塹壕から覗かせると、川島がそれを思いっきり叩きつけた。


「……さてと、始めるか」
滝浦、ルティア、上蔵の三人は、慎重に倒れこむイディオゴンに近づいていった。
ルティアが懐から小型のナイフを取り出すと、刃先を堅い甲殻に当てた。
突如刃が赤く光り、煙を上げた。
電流で熱を起こしているのである。

刃は、岩石と岩石の隙間を綺麗に縫うように進み、やがてルティアは手を止めた。
滝浦は頷き、切れ目に指を突っ込んで、メキメキと音を立てながら二枚の岩を肉体から外した。
ピンク色の筋肉があらわになる。
そこにあったのは、小さな穴だった。紛れもない、あの鉱石の銃創。

ルティアはさらに刃を進め、イディオゴンの肉体を解剖していく。そして――

「あった」
上蔵は『それ』を発見した。
滝浦はポケットから抗シピア物質でできたピンセットを取り出すと、クリスタルのように光り輝く鉱石をつまみ、持ち上げた。
そしてそれをガラスケースの中にカランと音を立てて放り込む。

「……触ったらお陀仏だな」
滝浦の冗談は冗談ではない。この小さな小さな石には、イディオゴンのシピアが凝縮されている。
それどころか、それだけでイディオゴンを死亡させたのだ。
人間など1秒で天国行きだ。


「とりあえず、支部に帰還だ。こいつは厳重に保管してあいつに渡す。いいな?」
「「異議なし」」


こうして第一部隊は忘れることなくイディオゴンのコア宝石を頂戴し、ネクラフ支部へと帰還する準備を進めた。