神々の戦争記
作者/海底2m

第一章 第二話 「記憶」-8
「今回は研究部からの提供で、実験段階にある武器を調達してもらった」
交番の多目的室でミーティングが始まり、上蔵が資料を配りながら説明を始めた。
もうすでに日は暮れそうになっているのが、窓の外から差してくる赤い光でわかる。
ゼロ
「零式の制御型シピア発射装置。幻シピアを除く5つのシピア装置がそれぞれ1つずつ届いている。
各武器については後で説明するからよく聞いておけ。
まず、この武器の特性についてだが…」
黙々と説明を続ける上蔵の声と、資料をバラバラとめくる音が響く中、
まるで異国の地に放り込まれたかのような錯覚を覚えた少年がいた。
「川島ぁー」
ミーティングが終わったのち、勇は川島の肩にどっと体重をかけた。
どうした、とむっとした顔をして川島が聞いてきた。
「意味が分からなかったYO」
「死ね」
「死ね…ってええぇえ!?酷すぎだろおい!」
「酷いのはお前だ」
川島はすたすたと、用意された大部屋に向かった。
もちろん、その肩に乗っていた勇の手はズルリと落ち、バランスを崩した勇は前に転びそうになる。
「だってマジで意味不明だったんだもん!制御型とか零式とか…」
「あーれ、五十嵐また話聞いてなかったの?」
割り込んできた鈴原に勇は顔を真っ赤にして怒鳴った。
「聞いてましたよ!!聞いてもわからなかったんです!」
「それは聞いてないのと一緒だな」
「川島正かーい」
鈴原が川島を人差し指で指し示す。
その後、廊下を歩きながら二人に説教混じりの説明を聞かされた。
制御型シピア発射装置とは、シピアーの身体から発せられたシピアを、機械により制御し、
形成が困難なシピアの創造を可能とする武器である。
例えば、炎シピアがレーザー状のビームを発射したり、水シピアが球状の弾丸を作るのは難しい。
しかし、制御装置を装着することで、その形成を自由自在に操ることが可能となる。
今回用意された種類は、球型のシピアを生成する制御装置で、手首ににつける腕輪のような形状らしい。
つまり、手首より先=手から放出されるシピアを任意に球状に変更できるという。
鈴原曰く、
「水道が体でホースが腕としたら、制御装置は散水ノズル」らしい。
今回のは実験用で、うまくいけば全身用の物や、さまざまな形状のシピアを形成できるらしい。
「、とまぁこういうわけだ」
説明が終わったちょうどその時、今日からお世話になる大部屋が見えてきた。
いくら巨大な交番で宿泊設備が整っているとしても、全員分の個室を借りられる予算は支部には、ない。
今回動員された第一グループは男子46名、女子は27名。男子は8人用の大部屋を二つ借りた。
「ふ、二つ!?どう考えてもたりねぇだろ!
8人用の部屋に46÷2=23人…ってことはほとんど3倍じゃねぇか!」
「問題ない」
「すがすがしく答えないでくださいッ!」
一応、女子の方は配慮されて12人用を二部屋用意されたらしい。いや、それでも定員オーバーだ。
「ま、とりあえず飯食おうぜ」
川島の一言で、荷物を部屋に放り投げてから、三人は食堂へ向かった。

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