神々の戦争記

作者/はぜのき(元海底2m

第五話 「裏鉄隊と残された一匹」-11


『我々は【スピノザ】と呼ばれる此処とは異なる次元に存在する世界に住んでいる』
「スピノザ……」

川島が言った。どうやら、川島も警戒が解けたらしい。オルグは頷いて続けた。

『スピノザに住むことが許されているのは、神と副神、それから特例の妖魔だけだ』
「「特例の妖魔?」」
勇と川島はほぼ同時に言った。オルグは頷く。

『神の居た時代から生き続けている妖魔だ。言うなれば、我々副神よりも前から住んでいる』
「ってことは……」

勇が考え込むと、川島が代わりに口を開いた。

「あんたらは神様たちが死んだ後に生まれてきた訳だ」
『いかにも』

オルグはそのまま言葉を続ける。

『我々副神は神の意志を継ぐ者として生まれてきた。『副』が付くのはそのためだ』
「その意志ってのは何なんだ?」
川島は聞いた。

『スピノザと世界の均衡を守る。ただそれだけだ』
「じゃぁ何でバーゼルシピアーしか召喚できないんだ?」

勇は少し怒ったように聞いた。それを聞いて、オルグは不思議そうな顔をする。

『何だ、そのバーゼなんとかは』

勇は正直に驚いた。仕える者の正体を知らないとは。

「いが――コイツみたいな奴の事だよ」
川島が途中で訂正した訳は、言うまでもない。オルグは納得しきれない様子で顎を上げた。

『継承者の事か?』
「「継承者?」」

今度はオルグが驚いた。

『自分の正体を知らないとは驚きだ』
「いいから継承者ってなんだよ!」

バカにされた気分になり(川島曰くすでにバカなのだが)勇は声を上げた。
オルグはニヤリと笑って答える。

『英雄の話は知っているであろう。神方が遺された力で志の神を封印した六人の人間の話だ』
「カミガタ?」
『神々の敬称だ。「神様」は余りにも流通しすぎているからな』
「ほう」

川島は感心したように言った。
「意外にキッチリしてるんだな」

それを聞いて、オルグはフッと笑った。

『まぁな。話を戻そう。単刀直入に言うが、その六人の英雄がいわば継承者だ』
「えっ、てことは……」
「英雄はバーゼルシピアーだったってことか」

オルグは頷く。
『英雄の力を直々に受け継いだ人間、それが継承者であり――』
「バーゼルシピアー……」

勇は呟いた。それと同時に、自分の力がそれほど大きいものであったということに驚く。

『さっきも言ったように、継承者の力は神方のそれであると言っても過言ではない。
 現に、スピノザにある「石」の力を吸い取って、継承者は戦う』
「石???何のことだ?」

川島がきくと、オルグは説明した。

『神方が亡くなったとき出来た巨大な石柱だ。その中に神方の力は封印されている』
「!!……それって…」

勇は前に夜の廊下で氷雨に聞いた話を思い出した。





「神のコア宝石、だよな……志の神のそれも、どこかにあるってあいつは言ってた」
「あいつ?って誰だよ」


勇は黙り込んだ。