神々の戦争記
作者/海底2m

第一章 第三話 「たかが幻、されど幻。彼の瞳もいつも幻(殴」-2
放送から3分で、第一部隊全隊員が正面玄関にそろった。
訓練用の迷彩服姿の隊員がズラッと並んだその光景は圧巻だ。
滝浦が前に出て声を張り上げた。
「シフトに多少変更があった。一士以上の第一部隊員はこれより任務に向かう。
二士以下の午後からの訓練は、第二部隊長、赤石衛二佐を監督の元に行う。
昼休み終了後は速やかに第二地下訓練施設に向かうこと。分かったか!」
「「「「「了解!!」」」」」
言いながら、川島は隣の勇と桐山を、勝ち誇ったような眼差しで見降ろした。
二人は同時に口をとがらせ、敬礼した手を下ろした。
「ねぇ聞いた?あの赤石二佐だって……」
「聞いた聞いた。うちもあったことなくて……」
「なんだ?赤石二佐、有名なのか?」
地下訓練施設に向かっている途中、勇は周りの囁きをそのまま川島に尋ねた。
川島も周りの課員に視線を移しながら口を開く。
「あぁ、かなり若い頃からネクラフ支部にいたはずだけど」
「だけど?」
桐山が先を促す。
川島は言いにくそうにして声のトーンを落とした。
「……親友が妖魔狩りをしてるらしい」
「「!!」」
妖魔狩りとは、ゼンザスに所属しないものが不法に妖魔を狩る事であり、いわゆる犯罪者だ。
もともと、妖魔狩りをしてはいけないわけではなく、
「無断でシピアを使ってはいけない」という規定があるのだが、ゼンザスは、この規定を全面的に解除されている。
というか、ゼンザス以外は基本、シピアの使用は許されていない。
つまりはゼンザスに所属しないシピアーはシピアを使えないというわけだ。
ゼンザスを警察とするならば、一般市民に拳銃を持たせているのと一緒だ。
拳銃なら取り上げることができるが、魂は無理だ。一度魂に宿ってしまったシピアはどうする事もできないのだ。
だからこそ、シピアーは生まれた瞬間から精密検査をされ、
通常の二倍以上もの資料を提出し、定期的に所在地を報告せねばならず、常に管理されている。
一時期は人権侵害だと叫ばれた時代もあったが、今はなんとか収まっている。
また、力を持った人間がそれを使おうとしない訳はない。
これをすると罰金になるのだが、おかしな話、この罰金はネクラフ支部の予算収入源の約5割を占めている。
妖魔狩りは、ゼンザスから逃げた、否、今もなお逃げ続けている悪。
勇達はおろか、全世界の人間が、そう教育され続けてきた。
「木曾善吉と飛騨竜輝。どちらも最終位は三佐だって聞いてるが…」
「よし、赤石二佐に聞いてみよう!」
「そうしよう!」
勇の言葉に桐山は賛成し、二人は猛ダッシュで地下へと向かった。
「あ、ちょま……はぁ…」
川島はため息をついた。

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