神々の戦争記
作者/海底2m

第一章 第一話「神とか…いるわけねーじゃん」-5
速攻は迅速かつ圧倒的だった。
不意を突かれたティラノサウルスのミニチュア版のような妖魔は、横に転がった鈴原に目が行き、かみつこうとするが、
後方の水撃隊の放水が横から直撃し、2秒と持たずに横転する。それを機に、準備していた鈴原たちが電線銃をお見舞いした。
鋭い鉤爪が妖魔を襲い「ギャァ」と悲鳴を上げる。
そんなことはお構いなしに、勇は拳を青白く発光させ、思いっきり妖魔になぐりつけた。
『ズバババッ』と稲妻がほとばしり、一斉に辺りは煙を上げる。
もちろん、鈴原たちも電線を通して電撃を食らわせる。
「攻撃止め!総員戻れー!」
やがて、荒川が怒鳴った。
放電しっぱなしだと、服やらなんやらが全部だめになるので、早々に切り上げる。
鈴原は鉤爪だけを切り離し、電線を回収する。
勇はもう一発だけ、と最後の蹴りを入れると、ダッシュでトラックの方へ走った。
あとはもう狙撃隊と水撃隊の防衛戦である。
全員、50m程離れたところで膝をつき、体勢を整える。と、煙が上がっていたところからかの妖魔が出てきた。
眼光が赤く輝き、口から煙を吐いている。
うぉ、迫力あんなー、などと感心している場合ではない。
「雷撃隊はトラック戻れー!
狙撃隊及び水撃隊は真っ向から攻撃しろ!絶対に包囲するな!」
射程が一直線である放水は、妖魔を包囲している状態では味方に流れ弾が当たる可能性があるからだ。
水撃隊が前に出て、トラックに開いた射撃口から銃口が見えたとき、
「ボッ」
妖魔が天を見上げ、口から火球を吐き出した。
ヒュ~~~~と、花火のようにゆらゆらと昇っていく火球を見とれていると、また荒川が叫んだ。
「回避―――――ッ!!」
勇が一瞬コケ?とした状態で首をかしげていると、上の方で何かが輝くのが見えた。
見上げると、火球がパッと数十個に分裂して、ミルククラウンのように舞った。そして――
『ゴッ』「!?」
分裂したそれぞれの火球は、それぞれの隊員のもとへと正確に突っ込んできた。もちろん、一つは勇に。
回避の準備ができていなかった勇はそのまま硬直して目をつぶる、と。
『ズザッ』
抱きかかえられるようにして、勇は草むらに突っ込んだ。後方で炎上音が聞こえる。
「鈴原士長!」
突っ伏す勇の背中に乗っていたのは鈴原だった。どうやら間一髪、回避に成功したらしい。
鈴原は起き上がるとピースサインを見せた。
「借り1ね」
そういって鈴原はトラックの方へと駆けて行く。残った勇には苦笑しかできなかった。

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