神々の戦争記
作者/はぜのき(元海底2m

第四話 「コメディを取り戻すべく旅へと出かけよう」-15
「――んで、気配感じたから地下に入って……」
「なんでそこで勝手に動くのよっ!」
説明の途中、桐山に突っ込まれると、勇は顔をしかめて反駁した。
「だってあのままじゃ支部長が!」
「結果的に手遅れだったでしょ!あぁ、支部長はもうダメかも……」
どういう意味、と勇が訪ねると、ここ数日間の様子を話してくれた。
「あんたと川島と支部長、それから駐車場の見張り役の二人がいっぺんに搬送されてきたんだけど……
川島は背中から結構深く斬られてたみたいだけどなんとか大丈夫みたい。
二人組の人たちは出血が多くてまだ意識が戻ってないわ。命に別状はないみたいなんだけどね。
支部長はもう年だから手術に耐えられるかどうかってところで……
一応手術はしたみたいなんだけど、もう植物人間状態。支部復帰は無理だって」
「そうか……」
勇は天井を見上げてため息をついた。
――四人……
四人、自分のせいで傷ついた人間がいる――――
その時、不意に桐山が問いただした。
「そういえば、五十嵐以外の全員、刃物みたいなので斬りつけられた傷なのよ。あんた何か知ってない???」
それを聞いて勇は話そうと思っていた話の続きを始めた。
「無がいたんだよ。あのデカメタル白モフモフ」
「あぁ、この前荒川教官が惜しい所で逃がしたっていう」
正確には荒川が逃がしたわけではないが、勇は無視してそのまま続けた。
「んで、支部長? かは分かんねぇけど、おっさんはそれにやられたっぽい」
「支部長よ!あんたホント顔覚え悪いわねー」
俺の顔覚えじゃなくて、支部長の顔がありきたりすぎるのが悪いんだと思うけどなぁ。
勇は心の中でそうつぶやくと、口を開いた。
「んで、その後なんとかっていう奴が出てきて……」
「ちょっと待ちなさい!そのなんとかって誰よ」
そんなこと言われても知るはずがない。名乗られた記憶はあるが。
「知らねぇよ。なんとかっていう組織にいるとかなんとか」
「あんたさっきから重要なところになんとか使いすぎよ!」
「最後のやつは別に重要じゃないだろ!」
勇が声を上げると、桐山はため息を一つして頬杖をついた。
「とにかく、そのなんとかっていう組織が関係してるってことねー」
「デミグラスもそいつらの仕業かぁ?」
一般的なハンバーグソースの名前を上げられ、顔をしかめた桐山に、勇は身振り手振りでカラスを表現した。
桐山は「あぁ!」と声を上げて納得した様子。
「手羽先のこと?」
「意味分かんねぇよ!!」
一通り説明すると、今度こそ桐山は納得した様子でうなずいた。
「最初っからそう言いなさいよ!」
「うるせぇな!デミグラスの方が言いやすいんだよ!」
なかなか話を進ませてくれない二人である、と、これは筆者の単純なコメント。
桐山は息を抜いて、ミニテーブルの上にあった紅茶を一口飲んだ。
「まぁ、どっちにしろあたし達の出る幕じゃないね」
その時、ドアが開いて人影が姿を現した。

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