神々の戦争記
作者/はぜのき(元海底2m

第五話 「裏鉄隊と残された一匹」-2
『ゴンゴンゴンッ』
「ッ!?」
どれくらい時がたっただろう。
暗闇の中突如、ガラスを鋭いものがつつく音が響き、勇は目を覚ましてベッドから飛び降りた。
――と、瞬間部屋が閃光に包まれる。
勇が目を細めて見上げると、川島が電気をつけたようだ。立ち上がってカーテン閉まる窓を見つめている。
「……妖魔、か……???」
「分からん。とりあえずお前が開けろ。俺は後ろでバックアップ」
「え、でも支部内でシピアは……」
「正当防衛だろ。罪にはならねぇ」
再び、窓ガラスが叩かれた。
勇は川島の顔を見て、恐る恐る窓に近づき、
右手の拳に雷を宿しながら左手で片方のカーテンを思いっきり引っ張る――!と――――
「ッ!? デミグラス!?」
「いや、小さい!」
ガラス越しに殴りかかろうとした勇の腕を、川島はガシリと抑えつけた。
確かにそう言われれば、ガラス越しに映るカラスはこの前のそれよりもだいぶ小さく、通常のカラスとほとんど変わらない。
「しかもコイツ……容量がない」
「なら……本物のカラス……とか……?」
分からん、と川島が首を横に振った。しかしその時、ふと勇はあることを思いついた。
「川島……こいつ、中に入れようぜ」
「はぁ!?」
川島は声を荒げた。
「危険生物だぞ、中で騒がれたらどうすんだ」
しかし、勇はそれを無視して窓に手をかける。
「お、おい……」
その制止もむなしく、勇はガラッと窓を開け放った。
バサバサと羽を動かす音とともに、カラスが中に入ってくる。
「大丈夫だよ、コイツ、悪そうじゃねぇもん」
勇がそういうと、怪訝な顔をしていた川島はあきらめたように窓を閉めた。
カラスはしばらく部屋の中を飛び回っていたが、やがてパタパタと勇の肩に降り立った。
その様子を見て川島が言った。
「ペットみたいだな」
「だろー!? 俺もそう思ってたんだ!」
カラスがペットとは妙な話だが、悪くはない。現に、カラスは懐いているかのように勇に身を寄せている。
「だけどどうすんだ?このままいしておくわけにもいかねぇぞ」
「さぁな。今日はこのままにして、明日氷雨にでも聞いてみようぜ」
勇はカラスをなでながら答えた。川島は溜息をついて肩をすくめる。
「好きにしろ。俺は寝る」
「心配すんなって。俺も寝る」
勇はケラッと笑うと電気を消して、カラスとともにベッドに入り、カーテンを閉めた。
カラスはバサバサと遮られたカーテンの内で飛んでいたが、やがて大人しく勇の顔の隣に羽を休めた。

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