神々の戦争記
作者/海底2m

第一章 第一話「神とか…いるわけねーじゃん」-6
「アホかあいつ」
荒川はつい愚痴をこぼした。ご丁寧に井上がそれを拾う。
「事が起こって判断するタイプだね」
井上のその説明はまさに勇ピッタリである。
回避と言っているにもかかわらず、攻撃されてないから動かない。だが井上はその後を間違った。
「荒川も昔こんなだったね」
「井上ェ!!」
荒川は思いっきり井上の手首をつかみ、上に掲げた。
「あッつ!!ちょっと手加減しろよ焦げちゃうよ!」
「知ったことか!」
井上は荒川の手を振り払って、手首にフーフーと息を吹きかけた。
シピアーは、自分のシピアに対しては耐性を持っているので荒川に被害はない。
「これより指揮権は滝浦隊長に移行する!!チャンネル切り替え!!」
やけくそのように怒鳴った荒川を見て井上がクククと笑った。
*
「ちょっとアンタ何してんの?」
案の定突っかかってきたのは颯希である。勇はため息をついた。
「さぁな」
「アンタさぁ、回避って言われてんのに何でボーッとつっ立ってんの?
鈴原士長いなかったらアンタ黒焦げだよ!?わかってる!?」
「はい、わかってます、すみません、もうしません」
一方的に切り上げてそそくさと逃げる。その時、滝浦隊長から無線が入った。
『水撃隊はあたりの消火をしつつ遠方から放水し妖魔を少しずつトラックに誘導しろ!
合図したらトラックの脇から狙撃隊と共に叩く!雷撃隊は待機ッ』
それは天の救いに等しく、颯希はそばにあった燃え盛る炎を消しにかかった。
勇はスタスタとトラックの方に戻っていった。
トラックを除くと、もう鈴原は先に入っていた。
「お疲れ」
「お疲れー」
「…お疲れ様です」
川島と鈴原の声掛けに、勇は沈とした表情で答えた。
「なんだ、さっきの奴か」
川島は弾倉を取り換えながら聞いた。それもあるが、
「あんの桐山マジぶっ殺すッ!!!」
思いっきり蹴ったトラックの底から、バシッと火花がはじけた。
「ちょっとトラック痛むでしょー。いくらすっと思ってんの」
「知りませんッ!」
金のことに関してはその右に出るものがいない鈴原は勇が蹴ったところをすりすりとさすった。と、
『ズグオォンッ』
外から爆発音が聞こえ、トラックが微妙に揺れる。辺りがざわめきに包まれた。
「何、どした?」
鈴原は川島のところにある射撃口から外を覗いた。
「どうなってます?」
直径5cm程の射撃口は、一人だけでいっぱいいっぱいで、二人覗くことは不可能だ。
「あー」と鈴原がしばらく唸った後、顔を戻して出口の方に歩いて行った。
「これはのんびりお花に水やりしてる場合じゃねぇな。
ちょい命令無視になるが外出るぞー」
「え、ちょ」
ちょこちょこ命令を無視して行動するのが鈴原だ。勇もそれにつられて外に出た。

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