神々の戦争記
作者/はぜのき(元海底2m

第五話 「裏鉄隊と残された一匹」-29
「一体どうなんだろうな、俺達……」
「さぁ??」
合同の朝礼が終わり、勇を含めた三人トリオは混雑する廊下の中、一時限目の講義に向かっていた。
ぶっきらぼうに答えた川島が気に食わなかったのか、勇は頬を膨らませた。
今日の正午、ちょうど昼食休憩が始まってすぐだ。
その時、集合場所にいるかいないかによって、裏鉄隊への入隊するか否かが決まる。
「でもさ、世界がこんなに広いのに志シピアの宝石がネクラフにしかないなんてちょっと不思議じゃない?」
「あ、確かに」
桐山の結構いいところを突いてくるコメントに、勇はポンと手をたたいた。
「おそらく、志の神はネクラフで封印されたか、もしくはあれが嘘をついているって事だな」
「「嘘をついている???」」
川島の謎の解釈に、二人は首をかしげた。川島は前を見つめたまま説明を始めた。
「もしかすると、こっちの情報が敵に漏れているのかもしれない。
波状検出器を使ったサーチングもばれていて、こちら側にあたかもコア宝石があるように思わせることも――」
「でもでも、その波はコア宝石にだけ反応するんだよな?反応してるってことはコア宝石じゃねぇのか?」
川島は首を振る。
「コア宝石に反応するんじゃない。『志シピアに』反応するんだ。
いや、もっと細かく言えば、志シピアと同じ反応をする物質に反応する」
???何がどう違うんだ???
勇の頭の中は「?」でいっぱいだ。そしておそらく桐山も。
そうこうしているうちに教室に到着し、その後一時間、勇は朝安眠妨害された分を取り返した。
-*-
「なるほど、お前も呼ばれたか」
「そう、らしいんですよね……」
ファレンは、今朝の召集の後すぐさまルティアの元へと相談に来ていた。
ルティアなら何か知っているかもしれない、という、変な期待と先入観によるものだが。
しかしそれも全く的外れなわけではなく、ルティアは耳寄りな情報を教えてくれた。
「知っていると思うが、過去七回の裏鉄隊召集の目的はいずれも明らかになっていない。表向きにはな」
「表向き……?」
ファレンはルティアを見上げながら首をかしげる。ルティアは頷いて口を開いた。
「実は、第七期裏鉄隊について詳しく知っている奴がいるんだ」
「そ、その人は一体……」
ルティアは周りの様子を伺いながら、ファレンの耳元まで顔を近づけた。
「―――――!!!?!?!?」
全身から汗が噴き出し、顔がみるみる赤くなっていくのが自分でも分かる。
身体を完全にこわばらせ、硬直したファレンなど気にする様子もなく、ルティアはそっとつぶやいた。
「――木戸善吉。どこにいるのかも、生きているのかさえ分からん男だ」
しかしながら、ファレンにはそれを落ち着いて聞き入れる余裕がもはや残っていなかった。
間近に迫るルティアの横顔と、破裂しそうなほど高波打つ心臓で、このままショック死してもおかしくない。
「――ファレン?どうかしたか?」
「い、いえ……アハハハ、なんでもないです……あ、ありがとうございましたっ!でわっ!!!」
ファレンは我に返り、全速力でもと来た方へと駆けて行った。
その背中を見届け、ルティアは顔をしかめる。
「……あいつ、この後同じ訓練、だよな?」

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