神々の戦争記

作者/はぜのき(元海底2m

第五話 「裏鉄隊と残された一匹」-13


勇は布団に入ってからも全く寝ることができなかった。そういえば昼からカラスの姿がない。
なんて気まぐれな奴なんだとブツブツ心の中で呟きながら、ゴロリと寝がえりを打つ。

――……バーゼルシピアって、何なんだよ。


オルグの言葉がよみがえる。

(英雄の力を直々に受け継いだ人間、それが継承者――)

じゃぁ何だ、俺に英雄になれって言うのか。
英雄なら川島の方がよっぽど向いている。ていうか、何で俺なんだよ。意味が分からない。

様々な思いが勇の中で交差し、ぶつかり合う。


――でも、何かが変わってきている気がする……


そんな不思議な予感が、勇を包み込んだ。
裏鉄隊の事もそうだが、何より志の神の事が頭から離れない。氷雨がわざわざ勇を呼び出した理由は何なのか。
志の神、志の神――――



「……分かんねェよ…父さん……」

勇はまた寝がえりを打って目元を拭った。が、その時――













   お  前  は  神  を  信  じ  ぬ  か















「――ッ!!?」

勇は金縛りにあったように体が硬直するのを感じた。
そう、イディオゴンを討伐しに行った、あの夜――






   志  の  神  こ こ  に  あ  り  け  り









謎の声はまだ響く。頭がガンガンと音を立てて揺れる。


「や、め……」


勇は声を上げようとするが、口が思うように動かない。


――コイツ……まさか志の神か……?











        そ  う  だ








勇はギリッと歯を立てて力んだ。何もできない。くそ、調子に乗るんじゃ――





「ねぇぞゴラァアアアアァァァッ!!!!!!!!!!!」










そこから一体何が起こったのか、勇は覚えていない。