神々の戦争記

作者/はぜのき(元海底2m

第一章  第三話  「たかが幻、されど幻。彼の瞳もいつも幻(殴」-3


「え。。。まさか。。。あの人が赤石二佐。。。?」
「そうっぽいよな……いや、でも……」

地下訓練施設は、射撃から基礎トレ、さらにはシピア射出訓練なども行える万能施設だ。
地下フロア3階分をくりぬいて作られた一つの部屋のようなこの施設は、どこか無機質な雰囲気がある。
もうほとんどの隊員がそろっており、ガヤガヤと話し声が聞こえる。
そんな中、その壁際にどう考えてもここにあるべきではない事務椅子を置き、
さらにその安っぽい椅子の上にまさしく『帝王』の名にふさわしい男が座っていた。
白いTシャツに黒いジャケット。ジーンズに革製の靴。髪はボサボサでドッグタグをつけている。


赤石 衛――


飛騨、木曾三佐両名が現役だった頃、数多くの妖魔を薙ぎ倒してきたと言われるネクラフの英雄――
現在は戦う者ではなく「統べる者」として隊長の座についている。
堂々と足を組み、葉巻を吸う(もちろん禁止だが)その姿は百獣の王にも見えてしまう。

立ち止まっている二人が視界に入ったのか、赤石はその鋭い視線を勇に刺した。
二人の動きが完全に硬直する。

赤石はしばらく睨みつけていると、葉巻を手に持ち、立ち上がってこちらに向かってきた。
「「ひっ」」
思わず飛び上がって声を上げる。

しかし、赤石は足を止めることなく勇の目の前まで来ると、立ち止まった。黒い影が視界を覆う。
身長は勇の2倍近くに感じられ、その頭を勇の額まで下ろす。そして一言だけ言い放った。













「……並べ」







問答無用だった。

二人は目にも留まらぬ速さでなんとなくできている列に並ぶと、直立した。

赤石が列の前に立つと、ガヤガヤとしていた空気は一瞬で消え去り、静寂が広い施設を包み込む。
勇が隣を見るといつの間にか川島も並んでいた。

赤石はフーッと煙を噴き出すと、口を開いた。
「今日は第一の奴等と共に訓練を行う。各自、予定の訓練場所に移動しろ」
「「「「了解!」」」」

勇達は午後の訓練は射撃からだったので、レールが並ぶ射撃場へと向かった。
外で行うのと違い場所が確保できないため、隣との間隔が狭く、誤射したらどうしようと勇を不安にさせた。


勇がいつも通りスパスパ外していると、コツコツと音を立てながら赤石が近づいてきた。
全身に一気に悪寒が走り、鳥肌が立つ。

まずい、殺される――!!

と、目を強くつぶったその時、肩に手が乗った。

「腕がぶれてやがる。力入れて引き締めろ」
そういって、赤石は去って行った。勇の目が一気に輝く。

五十嵐!何発弾を無駄にする気だ!

五十嵐!お前はもう銃を持たなくていい!

五十嵐!お前はアホか!

などと怒鳴り散らしていた荒川とは月と鼻糞ほどの違いがある。
勇は気を引き締め直して、的を見つめ、全神経を集中させた。