神々の戦争記

作者/海底2m

第一章  第二話 「記憶」-17


土塊竜、その名の通り、イディオゴンは攻撃する隊員たちの足下の地面を砕き、土の塊を次々と積もりあげていた。
が、まずは敵の体勢を崩すこと。つまりは足を積極的に攻撃すればいいわけだ。
しかし、その足がイディオゴンを覆う甲殻の中で一番堅そうなのである。それはそうか、自分の弱点だもの。
なら、どうする。
シピア弾も跳ね返すほどの防御力。鉄棒でたたいて潰れるはずがない。
くそっ、と立ち往生していると、ふと、イディオゴンの爪が見えなくなった。
「うわああっ!!」
向こうの方で土塊が出没し、隊員がはねとばされる。
勇は自分の目を疑った。

「桐山、こっち頼む!」
「はい!」
決められているわけではないが、後方支援の方になんとなく力を入れていた桐山は、一番最初のけが人を任された。
うわ、ひどい。
桐山はその哀れな姿を見て正直にひるんだ。
着地点からもう一度突き返されていたのだから、相当なわけだ。
応急処置程度に胸元に巻き付けてある包帯はすでに赤一色で染まっており、もはやその役目を果たしていない。
とりあえず包帯を交換しないと・・・
桐山が治療道具が入っている箱を開けてごそごそやっていると、寝ていた隊員が桐山の足首をがっちりと掴んできた。
桐山はいったん手を止め、隊員に向きなおす。
「どうしました?」
隊員の手は血で汚れていて、こちらをじっと見つめるまなざしは必死に何かを訴えようとしていた。
「お、俺、見たんだ・・・」
隊員がふるえながら口を開けた。
もうほとんど体力が残っていないのが、身にしみる。
「なにを見たんですか」
しかし、これは重要な情報かもしれない。桐山が聞き返す。
「俺が、吹っ飛ばされる前・・・あいつが、の、足・・・」
ガクガクと震える隊員は付属語を間違えるほどだった。しかしまだ肝心なことが聞けてない。
「足、地面、が・・・に・・・ッ!」
隊員はうめくと、掴んでいる手を離しそのまま気絶してしまった。
「足がどうしたんですか!しっかりしてください!」
桐山は必死で隊員の肩を揺さぶった。
しかし、隊員が目を覚ますことはなかった。