神々の戦争記

作者/海底2m

第一章  第二話 「記憶」-15


「なに無口になってんの」
「いつものことだ」
妖魔の鳴き声と銃撃音で埋め尽くされる背景とは全くかけ離れた笑顔で問いただしてきた井上を、荒川は一蹴した。
と、いうのもアウェイを何度も使っていては集中力の途切れ=シピアの流出ストップにつながる。
簡単に言えば、死にかけで、切ったら次つくかどうかわからないようなエンジンと同じだ。
それ以上負荷をかけると、戦闘員が皆首から下げているストッパーでシピアは一切出なくなる。
この状況下でのそれは、班長として認められない。
「なんか感じるか」
腕に炎をまとい、氷獣に殴りかかろうとしていた荒川は制止した。
それを見た井上はさらに問いただす。
「やっぱなんかあるの」
「知らん」
ゴッという鈍い音と共に、目の前の氷獣が吹っ飛ぶ。が、すぐにまた起き上がった。
「弱いねー」
と、クスクス笑う井上はといえば塹壕の中で通信係である。
といっても、この場で井上に力を解き放たれてはそれはそれで問題なのだが。
辺りが片付いたところで荒川は塹壕に向かって歩き出した。
「交代だ」
塹壕に飛び降りながら、井上の隣で待機していた同期にバトンタッチする。
「反応が強い。それなりの力を持った妖魔かあるいは…」
『ドドドドドドドドドド――――――――』
「!」
地震とともに、パラパラと壁から砂がこぼれ落ちた。瞬時に身をかがめる。
にも関わらず、井上は表情一つ変えずに荒川に尋ねた。
「なに?」
荒川は内心ため息つきながらも、頭を回した。
「……地シピア…か?」

「うがががががっ!」
勇はバランスを崩し、そのまま地面に尻餅をついた。
「っ…今度はなんだ?」
川島も姿勢を低くして辺りを見回す。
「わかりませんが…下から来ているような気がします」
「……下?」
勇は自分の座っている地面を見つめた。と――
『ズグオォッ!!』
「!!」
激しい爆発音と共に、目の前の土から円錐型のドリルのようなものが突出してきた。
やがて振動はやみ、辺りには緊張が張り詰めた。
                   、、
そして砂埃がやみ、静かにそれは姿を現した。