神々の戦争記

作者/はぜのき(元海底2m

第四話 「コメディを取り戻すべく旅へと出かけよう」-7


「え?鈴原先輩が休暇???」
「うん。休暇って言っても一日だけだけどね」

午前の訓練を終え、食堂にて昼食をとっていた三人組。不意に桐山がそんな話を持ち出した。

「ご両親のお葬式があるんだって」
「あぁ……」

聞きながら勇は思い出した。確か前桐山に聞いたところによると、母親と元夫の間にできた子供が殺しに来たとか


名前は確か――し、し――

「でも明日って昇任試験じゃん?だから先輩はともかく、氷雨ちゃんはどうするんだろうねー」
「え? あ、そういやそうだな。別の日にでもやるんじゃねぇの?」

必死に思い出そうとしていた勇だったが、桐山に話を振られてあきらめた。
確かに試験の日とかぶるのは結構問題だが――

「別の日にやって大丈夫?カンニングっていう手も……」
「俺達ならともかく、あの人ならしないだろ」
「おい、今んとこ受かる兆しすらないお前ら。よくもまぁ悠々と試験の話出来るな。しかもカンニングフラグやめ

ろ」

川島が聞くに堪えず、ついに口をはさんだ。二人は同時にため息をつく。

「「別にどうでもいいしねー」」
「ハモるな」
川島は突っ込むとそのまま言葉をつづけた。

「そもそもだな。お前らただでさえバカなのに――」
((あ、説教モード入ったな。コレ))

まくし立てる川島を前に、二人は胸中で同じことを思った。


「――まぁこんな事バカに言っても仕方ないか」
そういって説教を締めくくった川島だったがその瞬間、桐山がピシッと挙手した。

「異議あり!『バカ』27回言った!おんなじ数だけ誰か殴って!」
「おっしゃ任せとけ」

勇が腕をまくって戦闘態勢に入った時、耳を突く通電の音と共にチャイムが鳴った。午後訓練開始5分前だ。


「「ちっ」」
「だから変なところでハモるなお前ら!」

三人は食器等を片付けると訓練へと向かった。お返しは後回しだ。


       -*-


午後最初の訓練は持久走。ただひたすらにトラックを走るだけの退屈な(相当しんどいが)訓練だ。

12周目に突入した勇は青空を見上げて変わりゆく雲の様子を観察していたが――




「―――――――――!…………???」

不意に違和感が勇を襲った。

――この感じ、前のデカメタル白モフモフとはちょっと違う……



















    ――でもなんか、嫌な感じがする――――


勇はそれでも足を止めることなく走り続けていた。いやなことは忘れて雲で心を癒そうとしたその直後。


『緊急連絡!只今支部上空から妖魔らしき複数の物体が飛来接近中、このままだと支部に直撃します!
 全防衛員は直ちに戦闘態勢に入ってください!!』
「総員集合ーーーーッ!!」

放送が終わるか否かという間際、滝浦が大声を上げて訓練中の隊員を呼び集める。

(飛来接近ってヤバくねぇか!?!?)
勇は疲れた体に鞭うち、演台前まで駆けた。

全員が集まるとまくし立てるように滝浦が話し始めた。

「過去200年でも例が少ない事態だ、支部内での直接防衛戦が予想される。
 詳しい作戦についてはまた後だ。各自戦闘態勢を整えろ!」
「「「了解!」」」

隊員は猛スピードで屋内に戻っていった。おそらく武器類の調達の為だろう。

そんな中、勇は考えた。


――もし、今さっきまでワイワイと楽しんでいた場所――たとえば食堂で妖魔と戦うことになったら――――




























        ――ダメだ―――――――――――


                死んでも中には入れさせねぇ――

勇は強く決意した。