ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人
作者/漆千音 ◆1OlDeM14xY(元Chess ◆1OlDeM14xY

【 Ⅰ 天使 】―― 1 ―― page3
天使界。
マルヴィナは、手にした『星のオーラ』を見て、にやっ、と笑った。
……『星のオーラ』。それは、人間の感謝の気持ちの形。人間には、決して見えない。
守護天使の仕事とは、人間を守り、助けることでその『星のオーラ』を手に入れる。
そして、それを天使界最上階にそびえたつ世界樹と呼ばれる大木に捧げることであった。
そして、捧げ続ければ、いつか世界樹に果実が実ると――それを彼らは、『女神の果実』と呼ぶ。
それが実った時、天使は天使界のさらに上空の都、『神の国』へ戻ることが出来る……
言い伝えにしか過ぎなかったが、天使たちは何千、あるいは何万と年月を重ね、今に至って捧げ続けていた。
……ところで。
マルヴィナがトン、と天使界に足をついた時、すなわち戻った時、一番最初に声をかけてくる奴がいた。
「おっかえりぃ、マルヴィナ」
「む。……ああ、ただいま、セリアス」
マルヴィナはその声に答えた。
……セリアス、彼は幼なじみであり、また、つい最近までは同じ
『守護天使候補(……後で説明付け加えますっ)』であった。
それを先にマルヴィナが『守護天使』となってしまったために最近の彼は何かというと、
「……俺はまだなれん」
……とばかりグチってブーたれていた。
「ははっ、まあまあ。直、なれるだろ」
と、軽く受け流してやるのも最近の日課。
「……キルガと同じ事言ってんな……一言一句」
「そうなのか? って、キルガは?」
「あの天使界史上最年少守護天使クンは武器の点検中です」
「……相当ブーたれてんな、セリアス」
とは、まあ余談。
「……ともかく、……報告行って来るなー」
「あいよ」
マルヴィナは、半ばコソコソとその場を離れる。
『守護天使候補』セリアスは、その背中を見送り、見送り続け、見送り終わって、深い深い溜め息をつく。
キルガの説明は、また今度に。 byマルヴィナ
天使界は、例えるなら塔のような造りである。
下には、人間界と天使界をつなぐ“星の扉”と、天使の祈りの部屋、資料室、休憩所、
見習い天使の部屋と、鍵のかかった部屋云々。
その上に、長老、つまり天使界の長である長老オムイの部屋・長老の間と、
守護天使記録書物庫、司書室、武具管理室、宝物庫などなど。
さらに上に行くには、上級天使あるいは守護天使でなければならない。
ちなみに、“快楽の泉”と呼ばれる、傷を癒す効果のある泉や、さらに上、
簡易な部屋を除き、最上階に、世界樹はある。
天使界の掟の中に、『人間界から戻ったら長老に報告する』的な内容のものがある。
星のオーラの数に弾む気持ちをどうにか抑え、マルヴィナは歩く。
この時間帯、長老の間は極端に込んでいるか、極端に空いているか(つまり無人)どちらかである。
空いているといいな――というマルヴィナの希望を完璧に打ち砕く長蛇の列であった。
「……ふん、並ぶか」
とりあえず忌々しげに呟いておく。
うずうずわくわくしているところにこれ、マルヴィナはひそかに溜め息をつくと、素直に最後尾につく。
いつしか空は夜。

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