ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人
作者/漆千音 ◆1OlDeM14xY(元Chess ◆1OlDeM14xY

【 Ⅴ 道次 】――2―― page3
当然だが、その大声に反応した者がいる。
メイドと、とある武闘家であった。
が――その二人が話しかけようとするより早く、キルガが呟く。
「あの果実……人間が口にすると、まずい」
「え? ……なんで?」
シェナが問い返す。マルヴィナはシェナに、知らないの? と聞き返し、素早く説明した。
「女神の果実は、願いを叶えるチカラがある。……だけど、願いがあまりにも強すぎたり、心に邪悪があったりすると、
食らったものの身体から破壊したり、自分を抑えることが出来なくなるらしいんだ」
「……え、何それ、知らなかった……てか、まずいんじゃないの? それ」
「かなりまずい。邪念はともかく、強すぎる願い事はありがちだし……スカリオ!」
「なんだい?」
名前を呼んでもらったスカリオは(コイツ、変態か、と言う声がセリアスから聞こえてきそうだ)いい返事をする。
「大神官が行きそうなところを知っているか!?」
そんなことは当然気にしていないマルヴィナは鋭く言い放つが、スカリオはビクッと硬直し、あさっての方向を見る。
「………………………………さ、……さあ?」
「…………っ肝心な時に……」
そんなことで八つ当たりも出来ないのだが――
「…………あの……心当たりが、あるんですが……」
こういった言葉が聞こえると、やはりスカリオの[使えなさ]を感じさせられるマルヴィナである。
それは、例のメイド―そう、大神官が行方知れずになる前に最後に会った彼女である―だった。
「はい?」
「あの……あたし、最後に大神官様にお会いしたんです。果実も、大神官様がデザートとして
出して欲しいと言われたので……お出ししました。でも……それを口にされたとき、大神官様は、
急に人が変わったようにフリーフロアを退出されたんです」
「…………間違いないな。女神――」
言いかけて、セリアスは一度口をつぐむ。
「……[俺らの探している]果実だ」
「そのようだね」
キルガも頷く。
「それで、心当たりがあるって言うのは?」
スカリオに対するものとは全く違う口調で、マルヴィナが尋ねる。ほとんどスカリオは無視されていた。
「ダーマの塔、さ」
次に言ったのは、武闘家の男である。シェナはその様子から、あ、この二人恋人だ、と鋭い観察力を見せた。
「ダーマの塔?」
「ああ」武闘家は答える。
「昔は転職の儀式はそこで行われていたんだ。だが、今は魔物の巣窟……
誰も近寄らないが、多分、そこにいると思う。俺も探しに行きたかったんだが、コイツ一人残してはいけないしよ」
「愛ね」シェナが呟く。
「……んじゃ、わたしたちが行こう!」マルヴィナ、勢い良く仲間を振り返り、拳を握り締めて言う。
「あんたらが!? い、いや、だけど、……あそこの魔物は強いぜ? 大丈夫なのか……?」
「じゃ誰かについて来てもらう」
あっさりと言ったマルヴィナに、おいおい、とつっこむセリアス。
……その後、マルヴィナはロウ・アドネスをつれて戻ってきた(一体どうやって誘ったのかは秘密らしい)。
いきなり現れた大男にスカリオはビビり、武闘家男は安心した顔になる。
「ロウさんが一緒なら心強い。……悪いな、あんたたち。こんなこと頼んじまって」
「ご、ごめんなさい……」
「謝る必要はないよ。どうせ、わたしたちは行かなきゃならなかったんだし……ね!」
マルヴィナが同意を求める。当たり前、と言うように、三人は頷いた。
この四人……武闘家男は、目を細めた。
もしかしたら、見かけによらず、凄い奴らかもしれない。会話から、何となくそう思った。
一同は、ダーマの塔を目指す。
…………何故か六人いた。

小説大会受賞作品
スポンサード リンク