ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人

作者/漆千音 ◆1OlDeM14xY(元Chess ◆1OlDeM14xY

 【 Ⅳ 】   登場人物紹介


 __マルヴィナ__
   元天使、人間界では19歳。
   剣術においてずば抜けた実力を持つ。
   呪いを跳ね除ける、不思議な能力があるが・・・
   現在、成り行きで『職』は旅芸人。

 __キルガ__
   元天使。
   マルヴィナの幼なじみ。冷静で知識豊富。女性連中に人気アリ、
   だが本人はマルヴィナに気があるらしい。
   槍術にかけて天才的。
   『職』は聖騎士_パラディン_(の割りにかなり素早い)。

 __セリアス__
   元天使、マルヴィナの幼なじみ。
   気さくと熱血を足して2で割ったような性格。
   何故か記憶力は抜群、戦いに関しては誰にも負けない。
   『職』は戦士。

 __シェナ__
   セントシュタインで出会った、銀髪と金色の眸を持つ娘。
   元天使の一人らしいが、マルヴィナたちとは面識がない。
   のんびりとした性格だが、よく火に油を注ぐ発言をする・・・
   世界有数の賢者の申し子。


__サンディ__
   自称『謎のギャル』の超お派手な妖精(?)
   やや強引な性格。人間には姿が見えない。

__ルーフィン__
   ベクセリアの学者。他人と関わりたがらない性格。
   義父及び町長からは嫌われているが、やはり気にしていない様子。

__エリザ__
   ベクセリアの町長の一人娘にしてルーフィンの妻。
   天真爛漫で、明るい。研究室にこもりがちなルーフィンの身を案ずる。

__ラオン・リアンダート__
   ベクセリア町長。頑固な性格。名前は適当に考えた(by作者

__ハイリー・ミンテル__
   ベクセリアの町長の家で出稼ぎとして働く女性。何故かリアンダート家執事の代理。
   妙に動きが素人らしくないことに四人は気付く。




【 Ⅳ 封印 】――1―― page1


 その数日後――
「マルヴィナっ」
 宴は終わり、少々だらけた雰囲気の漂うセントシュタインの城で、フィオーネはマルヴィナを呼ぶ。
「何?」
「もう旅立つんでしょう? 東のほうに関所があるのは知っている?」
「関所?」
 フィオーネは頷く。どうやら、黒騎士騒ぎで、別の領域に逃げ出さぬようにと封鎖していたらしい。
 だが、その騒ぎは終わり、問題もなくなったので、開放したという。向こうには、町があるとのことだ。

 ……というのを、マルヴィナは三人に話す。
どうかな、と言って話を終わらせたマルヴィナに、答えたのはセリアス。
「うーん……行きたいといえば行きたいんだがな。ほら、こんだけ星のオーラ集まったんだから、
今度こそ天使界へ行ける――ってあのハデハデ妖精が言ってたぞ」
「む。そっか。……本来ならそうするべきだよな」
「あぁ。……ま、とにかく、案内してくれよ。その、天の箱舟にさ」



 ……その二日後、四人が訪れたのは天の箱舟の元ではなく例の関所である。
 その理由は、簡単である。天の箱舟が動かなかったから、だった。
 名残惜しげに城をフヨフヨ飛び回るサンディを無理矢理つまんで峠の道へ向かったはいいが、
箱舟の様子は光る様子も動く様子も無く、ただしらーっとそこに突っ立っている(?)だけだったのである。
 それなのに何故四人がここにいるかと言われれば、これがまた複雑で。
箱舟の様子は変わっていなかった、だが、マルヴィナたちが何気なく中に入った時、
がこん、と一瞬動いたのである。マルヴィナがバランスを崩して尻もちをついていたから間違いない。
 その様子を見て、サンディはこう言った。
「やっぱ星のオーラでアンタの天使の力が少し認められたのヨ! 天使乗せりゃ箱舟ちゃん動くてアタシの想像
間違ってなかったんですケド! だからさマルヴィナ、関所てトコ目指すよ! で、その町でガッポリ――」
 落ち着け、とマルヴィナが制裁したところで、サンディの興奮はおさまった。

 ……という長ったらしい理由の元、今関所に立っているこの状況が出来たのであった。


「はー……ったく、ほんとにいつになったら帰れるんだろなー……マジで」
 セリアスが橋にもたれかかり、
「サンディ信じるのはこれが最後だっ」
 妙にマルヴィナが怒りマークを浮かび上がらせそうな勢いで言い、
「で、次の町って、何てトコなのかしら」
 シェナが弓の矢をもてあそびながら呟く。
ちなみに、その町の名と行き方を尋ねに関所の兵士詰め所に行っているのがキルガであった。
 ……と、川の中の魚が低く跳ねたとき、

「な……何だって!?」

 キルガの叫ぶ声がした。魚が一斉に逃げる。
 何事かと思い、三人は詰め所の中をのぞく。キルガが机に手をのせて、兵士をビビらせていた。
「ベクセリア……本当に、この先にベクセリアの町が……!?」
「あ、ああ。……兄ちゃん、まずは落ち着いたらどうだ?」
「あ……すみません。取り乱してしまって」
 珍しいなキルガが、どんな会話をしたらあんな反応になるんだろう、と幼なじみ二人は会話。
「……で、ベクセリアって」
「キルガの担当地。守護天使の」
「やっぱそうか! へぇ、この先に」
 そんなセリアスに、マルヴィナは一言。
「……セリアス。ベクセリアと聞くとその語尾に“ス”を付けたくなるのは……
わたしが冷めた天使だからだろうか」

 ベクセリアス。

「……俺の名前か?」
「そうだ。――どうしても頭の中でぐるぐる回ってる……ちっ」
 かなり落胆して言われ、しかも悪態までつかれ、反応できないセリアスであった。



 一同は、関所から北にあるそのベクセリアの町まで歩き続けた。
関所を発って二日目の朝方、ようやく見覚えのある土地まで来たとキルガが言っていた。
だが、それから約一日歩くことになるだろうと言われ、三人は一気に脱力した。
「遠すぎ」
 というのが[ベク]セリアスの感想。
「ベクセリアス言うな」
「だって面白いし。……それにしても、疲れたわね……」
 後半はセリアスの抗議を思いっきり無視して、シェナが溜め息。「マルヴィナは?」
「わたし? 別に平気」
「…………」
「………………」
「……………………」
 会話が続かない。
「………………」
「…………………………」
「あ、えーっと。ほら、紅葉が綺麗だ。ひらひら落ちてきて、エラフィタの桜みたい――」

          どさっ。

「………………。今、やけに大きな紅葉が落ちてこなかったか?」
「……ああ。――魔物じゃないかっ」
 半分キレた状態のマルヴィナが、足をドガンと踏み鳴らし、紅葉型の魔物を睨みつけてやる。
それだけで魔物は怯え、退散していった。
「おー怖」


 何だかんだ言って、その日のうちにベクセリアの町についてしまった。
 ――だが。
「……本当に、ここ……?」
「……間違いない」
 キルガは、重苦しく言った。
 やけに寂れた感のある町並み。夜だから、というわけではない。
おそらく、朝も昼も、この町は『眠った』ような状況なのだろうと、推測できる。
「……今は――通称“流行病の町”ベクセリア」
「は……流行病……!?」
 マルヴィナは呟く。人間は、それで死んでしまう。天使は、そうではない。
 これが、人間の、儚さ――
「どーだろー。ビョーキ治す薬でももってきたら、感謝されんじゃね?」
「……どうかな」
 サンディの意見に、キルガが即答で否定する。サンディがその行為に愚痴る前に続ける。
「この町には、ルーフィンという名の学者がいる。そしてその妻エリザは町長の一人娘なんだ。
彼もはやり病のことは彼女を通して知っているはずだ。だから」
「薬で治るなら、とっくに見つけ出して病も亡くなってるはず……ていう感じ?」
「……仮定はね」
 キルガは肩をすくめた。